先生からの「近いうちにご自宅に伺えたらと思いまして」という一言に、返事ができないまま電話を切ってしまった。不登校の家庭訪問を断るのは失礼じゃないか、断ったら学校との関係が悪くなるんじゃないか。そう悩んでいる保護者の方は少なくありません。
結論から伝えます。家庭訪問は法律上の義務ではなく、断ってかまいません。ただし「学校との連絡を絶つ」こととは分けて考える必要があります。断り方と、そのかわりの連絡の作り方をセットで整えれば、子どもを守りながら学校との関係も保てます。この記事ではその両方を具体的な文例つきで解説します。
申し遅れました。不登校の専門家の小幡和輝です。学校に行かなかった期間が、僕にはおよそ10年あります。その間はフリースクールで学び、18歳で起業しました。今は自分が、対面やオンラインのフリースクール、通信制高校の連携施設を運営する側にいます。
不登校の家庭訪問は断ってもいい。その根拠
まず押さえておきたいのは、家庭訪問を受け入れる義務は保護者にも子どもにもないということです。家庭訪問は学校の支援活動のひとつであって、就学義務のような法的な強制力はありません。
もうひとつ大事な根拠があります。文部科学省は令和元年の通知「不登校児童生徒への支援の在り方について」で、不登校支援は「学校に登校するという結果のみを目標にするのではなく」、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて社会的に自立することを目指す必要がある、と明確に示しています。
参考: 文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422155.htm
つまり、家庭訪問が子どもにとって強いプレッシャーになり、回復を妨げているなら、それは国が示す支援の方向性ともずれている、ということです。「先生が来る」とわかった日の朝から子どもの表情が硬くなる、訪問のあと数日元気がなくなる。そんなサインがあるなら、断ることはわがままではなく、子どもを守るための正当な判断です。
僕自身の話をすると、親から「いつまで休むの」と言われていた時期がいちばんきつくて、逆に「あなたが元気ならそれでいい」と言われた日から、家が安全な場所になりました。不登校の子どもにとって、家は最後の安全基地です。家庭訪問でその安全基地が「先生がいつ来るかわからない場所」に変わってしまうなら、本末転倒だと僕は思います。
学校が家庭訪問をしたがる理由も知っておく
一方で、先生たちが嫌がらせで家庭訪問をしているわけではないことも知っておくと、断るときの気持ちがずいぶん楽になります。
学校には、児童生徒の安全と状況を把握する責任があります。長期間顔を見られていない子について、学校は教育委員会に状況を報告する必要がありますし、万が一家庭内で深刻な問題が起きていないかを確認する役割も担っています。担任の先生が「一度顔だけでも」と言うのは、多くの場合この確認業務の側面が大きいのです。
だからこそ、断り方にはコツがあります。訪問だけを拒否して連絡を全部絶ってしまうと、学校は「状況が確認できない家庭」として心配を強め、かえって連絡が増えることがあります。逆に「訪問は控えてほしい。そのかわり様子はこちらから定期的に伝えます」と代替案をセットで示せば、学校は確認の役割を果たせるので、ほとんどの場合すんなり受け入れてくれます。
角が立たない断り方。そのまま使える文例
電話でも連絡帳でもメールでも使える形で、文例を3つ用意しました。ポイントは、感謝を先に伝えること、理由を子どもの状態で説明すること、代替案を添えることの3つです。
- やんわり断りたいとき 「いつも気にかけていただきありがとうございます。ただ、本人が先生の訪問を意識すると緊張してしまう状態が続いているので、家庭訪問はしばらく控えていただけると助かります。様子は私から定期的にご連絡します」
- すでに訪問がつらくなっているとき 「申し訳ないのですが、訪問のあと本人が数日不安定になることが続いています。回復を優先したいので、当面は訪問ではなく連絡帳やメールでのやりとりにさせてください」
- 玄関先の対応もつらいとき 「親の私も対応の負担が大きくなってきたので、しばらくは書面やメールでのやりとりに一本化させてほしいです。何かあればこちらから必ずご連絡します」
どの文例も、学校を責める言葉を入れていないことに注目してください。先生との関係を壊さずに、境界線だけをはっきり引く。これが数百の家庭とのやりとりを見てきた僕の実感として、いちばんうまくいく断り方です。
一度伝えても訪問の打診が続く場合は、担任個人ではなく学年主任や教頭に窓口を変えて、同じ内容を書面で伝えると整理されやすくなります。
断ったあとが本番。負担にならない連絡の作り方
家庭訪問を断ること自体より大事なのが、そのあとの連絡ルートの設計です。次の3つを親のほうから先に決めて提案すると、学校とのやりとりは一気に楽になります。
- 頻度を決める 「毎週金曜に一度」のように定期便にします。頻度が決まっていないと、学校は不安になるたびに連絡してきます。週1回の定期報告は、着信におびえる状態を終わらせるいちばん確実な方法です
- 手段を決める 電話は突然かかってくるから負担が大きいのです。連絡帳、メール、学校の連絡アプリなど、こちらのペースで読み書きできる手段を指定します
- 窓口を決める 対応する親を一人に決め、子ども本人に直接連絡しないでほしいことも合わせて伝えます
報告する内容は「今週は昼夜のリズムが安定していました」「タブレット教材を3日進めました」程度の2〜3行で十分です。
学校との連絡を細く長く保つことには、実利もあります。フリースクールやICT教材での学習を在籍校の出席扱いにしてもらう制度は、学校との連携が前提になっているからです。出席扱いの3つの要件についてはこちらの記事で解説しています。
https://freeschool.meikogijuku.jp/media/shusseki-atukai/
また、家庭訪問を断ったあとの家での過ごし方に迷ったら、日中の時間の組み立て方をこちらの記事にまとめています。
https://freeschool.meikogijuku.jp/media/futoko-nitchu-sugoshikata/
なお、学校とのやりとり以前に、お子さんに腹痛や頭痛などの体調面のサインが強く出ている場合は、無理に連絡体制を整えるより先に、小児科やスクールカウンセラーなど専門機関への相談を優先してください。
クラスジャパン小中学園という選択肢
家庭訪問を断ると、「学校とのつながりが細くなって、この子は社会から切れてしまわないか」という不安が残るかもしれません。その不安に対する現実的な答えのひとつが、家にいたまま先生とつながれるオンラインフリースクールです。
クラスジャパン小中学園は、まだ外に出るのが難しいお子さん向けのオンラインフリースクールです。ネットの先生(担任)が伴走し、自宅から自分のペースで学べます。2018年の開校からこれまでに2000人以上をサポートしてきました。
担任の先生とのやりとりはチャットが中心なので、玄関のチャイムにおびえる必要はありません。学習面では、生徒一人ひとりにカスタマイズされた学習AIが、答えをすぐ教えるのではなくヒントを出しながら一緒に考えてくれます。学習以外の用途には使えないフィルタリング設定付きなので、端末を渡すことへの不安にも配慮されています。
そして、学習記録が残る形で学びを進めることは、在籍校への報告そのものになります。一定の要件を満たせば在籍校の出席扱いになる実績もあり、出席扱い制度はクラスジャパンが先駆けとなって学校や自治体と一緒につくってきました。「家庭訪問は断ったけれど、学びと社会とのつながりは保てている」という状態を、家の中で作れます。
【クラスジャパン小中学園】詳細はこちら
https://www.cjgakuen.com/
まとめ。家を安全基地に戻すことがいちばんの支援
不登校の家庭訪問は断ってかまいません。断るときは、感謝と子どもの状態と代替案をセットで伝える。断ったあとは、頻度・手段・窓口を親のほうから決めて、細く長い連絡ルートに切り替える。この順番で進めれば、学校との関係を壊さずに、家を子どもの安全基地に戻せます。
今日できる一歩として、連絡帳かメールに「本人の状態を考えて、家庭訪問はしばらく控えていただけると助かります。様子は毎週金曜にこちらからご連絡します」と一文だけ書いて送ってみてください。この一通で、次の訪問打診への不安が消えます。
親の対応全般に迷いがあるときは、こちらの記事も参考になるはずです。
https://freeschool.meikogijuku.jp/media/hutoukou-taiou/
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