メンタルフレンドとは何か。不登校のお子さんの家に来る大人が担任の先生だけで、しかも本人が会いたがらない。そんな状態が続くと、「親でも先生でもない誰かが、うちの子と話してくれないだろうか」と思うことがあると思います。メンタルフレンドは、まさにその役割を担う公的な仕組みです。
先に結論を書くと、メンタルフレンドは児童相談所などが大学生など年の近い人を家庭に派遣し、不登校やひきこもりの子どもの遊び相手・話し相手になってもらう制度です。
利用者の費用負担は原則ありません。窓口は多くの場合、お住まいの地域の児童相談所です。ただし全国どこでも同じ形で使えるわけではなく、派遣まで待つこともあります。
この記事では、制度の中身、申し込みの流れ、費用と頻度の実例、うまく使うための考え方を順番に整理します。そのうえで、訪問のない日に学びと関係を切らさない方法として、ネットの担任という選択肢も紹介します。
自己紹介が遅れました。小幡和輝と申します。僕は約10年間の不登校を経験しました。当時はフリースクールで学び、現在は不登校の専門家として本を書いたり、2000人以上の子どもたちとご家庭をサポートしてきました。
メンタルフレンドとは。親でも先生でもない「少し年上の相手」
メンタルフレンドは、児童相談所が関わる不登校やひきこもりの子どもに対して、兄や姉にあたる世代の大学生などを「心の友」として家庭に派遣する制度です。東京都では18歳以上30歳未満の人が登録し、資格は不要で、1回につき2時間程度の活動を平日の昼間に行います。[1]
活動の中身は、話し相手になる、一緒にゲームをする、料理を作る、ときには勉強を見る、といったものです。何をするかは子どもの希望に合わせます。派遣される人は素人ではなく、児童相談所の職員から助言や指導を受けながら動きます。神奈川県では社会福祉学や心理学などを専攻する大学生や卒業生が中心です。[2]
僕がこの制度に価値を感じるのは、「なんで学校に行ってないの」と聞かない相手が家に来る、という点です。
僕自身、不登校だったころに初めてフリースクールへ行った日、誰もそれを聞かなかったことが衝撃でした。ゲームが好きな子がいて、すぐに仲良くなりました。評価も指導もしない相手との時間は、子どもにとって安全です。
メンタルフレンドは学校の先生ではないので、登校を促すために来るわけではありません。「学校に戻す道具」として期待すると、子どもは敏感に察して部屋から出てこなくなります。目的を決めすぎず、まずは家に他人がいる時間に慣れる、くらいの位置づけで使うほうが長続きします。
学校の先生の家庭訪問がしんどいときの考え方は、こちらの記事で整理しています。
>>不登校の家庭訪問は断ってもいい?負担にならない学校との連絡の作り方
利用方法。窓口は児童相談所、費用は原則かからない
申し込みの流れは自治体で少しずつ違いますが、おおむね次の順番です。
- 児童相談所に電話で相談する 「不登校の子どもにメンタルフレンドを検討したい」と伝える。担当の児童福祉司がつく
- 保護者と本人の意向を確認する 岩手県では、地区担当の児童福祉司との相談のあと、保護者と子どもとの話し合いを経て訪問が決まる[3]
- 相性を見て派遣者を決める 子どもの年齢や好きなことに合わせて、登録者の中から職員が選ぶ
- 日程と頻度を決めて訪問が始まる 保護者が在宅の日時に合わせる
頻度と時間の実例を挙げると、岩手県は原則として月2回、1回2時間程度です。札幌市は週1回、2時間程度の家庭訪問を基本にしています。[4] 自治体によってこれだけ幅があるので、「月に何回来てもらえるか」は最初に聞いてください。
費用は、利用する家庭の負担は原則ありません。東京都では派遣される側に活動1回あたりの謝礼が都から支払われる仕組みで、家庭が支払うものではありません。岩手県のように、活動に必要な実費だけ利用者負担と定めている自治体はあります。
児童相談所ではなく教育委員会が実施している自治体もあります。長崎県佐世保市では青少年教育センターが窓口で、25歳以下の教職課程の学生などを1回1時間程度派遣し、費用は無料です。[5] 名称も「メンタル・フレンド」「心の友」など自治体で揺れがあります。
ひとつ知っておいてほしい現実があります。東京都の案内には、登録した人全員に活動の依頼があるわけではないと書かれています。裏を返すと、派遣できる人数と地域には限りがあるということです。申し込んですぐ来てもらえるとは限らないので、待つ期間があることを前提にしてください。
民間のメンタルフレンドとの違い
「メンタルフレンド」という名前で、民間の団体や会社が有料のサービスを提供している場合もあります。公的な制度との違いは主に3つです。
- 費用 公的な制度は原則無料。民間は訪問1回ごとや月額の料金がかかる
- 申し込みの前提 公的な制度は児童相談所の関与が前提で、家庭の状況を職員が把握したうえで動く。民間は家庭から直接申し込める
- 頻度の自由度 公的な制度は月2回など枠が決まっていることが多い。民間は費用次第で頻度を増やせる
どちらが良いという話ではありません。まず公的な制度の有無と待ち期間を児童相談所に聞き、待ちが長い場合や頻度を増やしたい場合に民間を検討する、という順番が費用の面でも無理がありません。民間を使うときは、派遣される人がどんな研修を受けているか、活動中に保護者が同席できるかを確認してください。
うまくいく使い方。本人の「うん」を待ち、家を安全な場所に保つ
メンタルフレンドは、本人が会うことに同意して初めて機能します。「来てもらうことにしたから」と事後報告で始めると、子どもは自分の部屋を守るために扉を閉めます。まず「同じくらいの年の人が、ゲームの相手をしに来てくれる仕組みがあるんだって」と情報として伝え、返事を急がないでください。
最初の1、2回は、子どもが部屋から出てこなくても失敗ではありません。保護者が在宅している前提の制度なので、初回は保護者とメンタルフレンドが居間で話しているのを、子どもが襖の向こうで聞いている、という状態でも構いません。そこから顔を出すまでの時間は、子どもによって違います。
僕が2000人以上の子どもたちとご家庭に関わってきて感じるのは、第三者の訪問がうまくいく家庭は、訪問のあとに親が感想を聞きすぎない家庭だということです。
「どうだった?楽しかった?」と毎回聞かれると、子どもは次から「楽しかった」と言わなければいけなくなります。聞かずに、次の日程だけ淡々と決めるほうがうまくいきます。
不登校の子にとって必要な居場所の条件は、こちらの記事でまとめています。
>>【小・中・高】不登校中の居場所とは?必要な居場所の条件や国の方針もまとめて解説
クラスジャパン小中学園という選択肢
メンタルフレンドの訪問は、月2回や週1回といった頻度です。それ以外の日は、子どもは家で誰とも話さない時間を過ごすことになります。訪問のある日とない日の落差を埋めるものとして、僕たちはオンラインフリースクール「クラスジャパン小中学園」を運営しています。
ここでは、ネットの先生(担任)が一人ひとりにつきます。画面越しに毎日のやりとりがあり、声を出さなくてもチャットで返せるので、家に人が来るのはまだ難しいという子でも始めやすい形です。
メンタルフレンドが「家に来る少し年上の相手」なら、ネットの担任は「家から出ずに毎日つながる相手」です。両方を同時に使うこともできます。
2018年の開校から、これまでに2000人以上の不登校の子どもたちをサポートしてきました。一定の要件を満たし、在籍校の校長が認めれば出席扱いになる制度もあり、この出席扱いの仕組みはクラスジャパンが先駆けとなって学校や自治体と一緒につくってきたものです。
学習面では、生徒一人ひとりにカスタマイズされた最先端のAIサポートがあります。答えをすぐ教えるのではなく、ヒントを出しながら一緒に考えるAIなので、わからない場面でつまずかずに答えまで辿り着けます。学習以外の用途には使えないフィルタリング設定付きで安心です。
今日できる一歩
お住まいの地域の児童相談所に電話して、「不登校の子どものメンタルフレンドの制度はありますか。あるとしたら、いま申し込んだ場合どのくらい待ちますか」の2つだけ聞いてみてください。
制度の有無と待ち期間が分かれば、公的な制度を待つか、別の手段を先に動かすかを判断できます。子どもに話すのは、その答えを聞いてからで十分です。
まとめ
メンタルフレンドは、児童相談所などが大学生など年の近い人を家庭に派遣し、不登校の子どもの遊び相手・話し相手になってもらう公的な制度です。費用は原則かからず、頻度は月2回から週1回程度と自治体で幅があります。窓口は児童相談所で、教育委員会が実施する自治体もあります。
本人の同意を待ち、学校に戻す道具として使わないことが、うまくいく条件です。訪問のない日をどうつなぐかも、一緒に考えておいてください。完璧な正解を最初から選ぶ必要はありません。迷っている段階の相談こそ歓迎です。ひとりで抱え込む前に、話してみてください。
よくある質問
メンタルフレンドは誰に申し込めばいいですか?
多くの自治体では、お住まいの地域を担当する児童相談所が窓口です。電話で「不登校の子どもにメンタルフレンドを検討したい」と伝えると、担当の児童福祉司との相談から始まります。
佐世保市のように教育委員会の教育センターが実施している自治体もあるので、児童相談所で扱いがない場合は教育委員会にも聞いてみてください。
メンタルフレンドの利用に費用はかかりますか?
公的な制度では、利用する家庭の費用負担は原則ありません。派遣される大学生などへの謝礼は自治体から支払われます。岩手県のように活動に必要な実費だけ利用者負担としている自治体はあります。民間の団体が提供する同名のサービスは有料です。
子どもが会いたがらない場合はどうすればいいですか?
無理に会わせる必要はありません。まず情報として伝えて本人の返事を待ち、初回は保護者とメンタルフレンドが居間で話しているだけでも構いません。
家に人が来ること自体がまだ難しい場合は、ネットの先生(担任)が画面越しに毎日つながるオンラインフリースクールのような、家から出ない形の関わりから始める方法もあります。
出典
- 東京都児童相談センター「メンタルフレンドとは」 ページ 本文へ戻る
- 神奈川県「メンタルフレンドについて」 ページ
- 岩手県「メンタル・フレンドのご案内」 ページ
- 札幌市「メンタルフレンド募集」 ページ
- 佐世保市「ひきこもりがちな子どもたちに『メンタルフレンド』を派遣しています」 ページ
