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10分で帰っていた小4の男の子が「一人で行ってみたい」と言った日。3か月の記録

夏休みの終わりが近づくと、「このままで大丈夫でしょうか」「何かできることはありますか」というご相談が増えます。焦る気持ちは自然なものです。

今回は、明光フリースクール南阿佐ヶ谷新高円寺校のスタッフが記録した、ある小学4年生の男の子の3か月を紹介します。来ても10分で帰ってしまう日が続いたあと、本人の口から「一人で行ってみたい」という言葉が出るまでの話です。

目次

朝になると、身体が重くなる

その子は、学校へ行こうとすると体調が悪くなってしまう子でした。

朝になると身体が重くなり、動けなくなる。本人も理由をうまく言葉にできません。新しいことに挑戦することも、どちらかというと苦手でした。

理由を説明できないことは、決して珍しくありません。大人はつい「どうして行けないの」と聞いてしまいますが、本人にも分からないことがあります。言葉にできないまま身体が動かなくなるのは、よくある形です。

きっかけは「ゲームができるなら」

そんな彼が明光フリースクールに興味を持ったきっかけは、とてもシンプルなものでした。

『ゲームができるなら行ってみたい』

この一言から関わりが始まりました。

新しい場所に行くことが苦手な子にとって、「行ってみたい」と思える理由があるかどうかは決定的です。それが勉強である必要はありません。本人が興味を持てるものが入口にあることが、最初の一歩を軽くします。

10分で帰った日もあった

入会したからといって、すぐに通えるようになったわけではありません。

休んでしまう日もありました。保護者の方に付き添われて電車に乗り、校舎まで来る。そこまではできても、教室に入ると不安でいっぱいになってしまうことがありました。

来校しても緊張が強く、10分ほどで帰宅した日もあります。そんな日が一度や二度ではありませんでした。

記録したスタッフは、当時の気持ちをこう書いています。

『保護者の方にとっても、「せっかく来たのに」という気持ちはあったと思います。私も、「もっと長くいられたら」と思うことはありました』

それでも、見方を変えました。

『それでも、まずは来られたこと。校舎のドアを開けられたこと。10分でも、その場所で過ごせたこと。それ自体が彼にとって大切な一歩なのだと思い、焦らず見守っていました』

ここが分かれ目になります。10分を「まだ10分しかいられない」と数えるか、「10分はいられた」と数えるか。同じ事実でも、どちらで見るかで次の関わり方が変わります

明光フリースクール

この男の子が通っているのは、僕たちが運営する明光フリースクールです。明光義塾の教室を昼間の時間に使っていて、ボードゲームなどを通じて人と関わる時間を大切にしています。来られる日に来る、という形を前提にしています。

>>明光フリースクールの資料請求はこちら

フリースクールの教室のドアを開ける手
校舎のドアを開けられたこと。それ自体が大切な一歩でした

3か月後、保護者から届いた連絡

入会から3か月ほど経った頃のことです。保護者の方から連絡がありました。

『最近、本人が「一人で行ってみたい」と言っているんです』

スタッフは正直に驚いたと書いています。これまでの姿を知っていたからです。本当に大丈夫だろうか、途中で不安にならないだろうか、という気持ちもありました。

それでも、何より嬉しかった理由がこれです。

『その言葉が本人の口から出てきたことが嬉しかったのです。なぜなら「行きなさい」と言われたのではなく、「行ってみたい」だったからです』

大人が促した結果ではなく、本人の中から出てきた言葉だった。ここに意味があります。

その日の表情

彼は一人で電車に乗り、無事にフリースクールへやって来ました。

スタッフの印象に残っているのは、到着したこと以上に、その日の表情だったといいます。

『どこか晴れやかで。少し誇らしげで。そんな気持ちが伝わってくるような顔をしていました』

10分で帰っていた頃を知っている人から見れば、大きな挑戦でした。

フリースクールでボードゲームのガイスターを楽しむ様子
校舎で人気のボードゲーム「ガイスター」

大人に必要なのは「待つ胆力」

この出来事から、スタッフはこう書いています。

『子どもは大人が思っている以上にたくましい』

大人はつい、「次はどうしよう」「もっとできるようにならないと」と先のことを考えてしまいます。でも、子どもには子どものタイミングがあります。そしてそのタイミングが来たとき、自分の力で思っている以上の一歩を踏み出すことがあります。

『だからこそ、大人には「待つ胆力」が必要なのかもしれません』

子どもが自分から「やってみたい」と言う日を信じて待つ。言葉にすると簡単ですが、決して楽なことではありません。それでも、その時間には意味があります。

この記事の全文は、明光みらいのnoteで読めます。

>>10分で帰っていた男の子が、「一人で行ってみたい」と言った日

待つあいだに、学びを止めない方法もあります

「待つ胆力」が必要だと分かっていても、学習面が気になるのが正直なところだと思います。

通える場所がまだ見つからない段階や、外に出るのがまだ難しい段階では、自宅から参加できる形もあります。僕たちはオンラインスクールのクラスジャパン小中学園も運営していて、ネットの先生が担任として伴走します。一定の要件を満たし在籍校の校長先生が認めれば、出席扱いになった実績もあります。

>>自宅から通えるオンラインの選択肢を見る

出席扱いの要件については、こちらで詳しく解説しています。

>>「不登校でも出席扱いに?」出席扱いになる3つの要件を徹底解説

まとめ。10分を数え直す

この3か月に、劇的な出来事は起きていません。

休む日があり、10分で帰る日が何度もあり、それが続いたあとに本人から言葉が出てきました。変化は連続していなくて構わないということが、この記録からよく分かります。

大事だったのは、10分で帰った日を失敗として扱わなかったことです。ドアを開けられた、その場所で過ごせた、という事実の側を見続けたことが、3か月後の「一人で行ってみたい」につながりました。

今日できる一歩を1つ提案します。お子さんが今日できたことを、どんなに小さくても1つだけ書き留めてみてください。起きられた、着替えた、外の空気を吸った。それだけで構いません。続けていくと、変化が見えるようになります。焦りは、変化が見えないときに一番強くなります。

「うちの場合はどう進めればいい?」という段階でも大丈夫です。まずは話を聞いてみるだけでも、気持ちが少し軽くなるはずです。

>>不登校の専門家 小幡和輝の無料LINE相談

よくある質問

フリースクールに行っても、すぐ帰ってしまいます。続けて大丈夫でしょうか。

大丈夫です。今回紹介した男の子も、10分ほどで帰宅した日が一度や二度ではありませんでした。その場所に来られたこと、過ごせたことを一歩として数えて見守った結果、3か月後に本人から「一人で行ってみたい」という言葉が出ています。滞在時間の長さで判断しないでください。

子どもが学校に行けない理由を話してくれません。

理由を言葉にできない子は多いです。今回の男の子も、朝になると身体が重くなって動けなくなる状態で、本人も理由をうまく説明できませんでした。理由を聞き出すことより、興味を持てるものを一緒に探すほうが、次の一歩につながることがあります。

保護者の付き添いがないと通えない場合、どうすればいいですか。

付き添いから始めて構いません。今回の男の子も、当初は保護者の方に付き添われて電車に乗って通っていました。3か月後に本人から一人で行きたいという言葉が出て、実際に一人で通えるようになっています。段階を飛ばさず、本人のタイミングを待つことが結果的に近道になります。

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この記事を書いた人

1994 年、和歌山県生まれ。10年の不登校を経験。不登校当時はフリースクールで学び、定時制高校を経て、その後、国立大学へ進学。不登校の専門家として、不登校への偏見を払拭し、不登校になっても取り残されない社会を目指し活動。オンラインフリースクール『クラスジャパン小中学園』の代表として、これまでに2000人以上の不登校生徒をサポート。著書に『学校は行かなくてもいい/英治出版』『学校では教えてくれない 稼ぐ力の身につけ方/小学館』など計6冊。講演、メディア出演も多数。

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