明光みらいのアンバサダーを務める中川翔子さんをお招きして、講演会を開催しました。中川さん自身も学校に行けなかった時期があります。
この記事では、後半に行われた生徒たちとの質疑応答を中心に紹介します。質問したのは、明光みらいで学んでいる生徒たちです。用意された質問ではなく、その場で自分の言葉で聞いていました。

「中学に入って、人生の難易度が突然上がった」
質疑応答の前に、中川さんがご自身の話をしてくださいました。
小学校まではとても楽しかったそうです。絵を描くのが好きで、猫が好きで、ゲームが好き。担任の先生が「絵を描くなら中川だよね」と認めてくれて、引っ込み思案でも楽しく過ごせていました。
それが中学に入って変わります。スクールカーストや空気を読む文化。好きな絵を描いていたら「キモい」と言われ、そこから好きなものを出せなくなっていきました。
中川さんの言葉で、生徒たちに一番届いていたのがこれです。
『合わないのは、あなたのせいじゃない。合ったらラッキーだねぐらい』
こんな言葉もありました。
『たまたま集まった数十人のみんなと仲良くできる方が、むしろ才能だと思う』
学校が合わないことを自分の欠点だと思っている子は少なくありません。クラスの全員と仲良くできることのほうが特殊な才能だ、という見方は、その自責をほどいてくれます。
「仲がいいからこそ言えなかった」
中川さんはお母さまととても仲が良く、毎晩その日あったことをたくさん話していたそうです。
それでも、学校での辛いことだけは絶対に言えなかったといいます。
『心配させたくないし、そう思われるのが恥ずかしいから』
学校に行きたくない理由も言わなかったため、サボりたいだけだと思われてぶつかったこともありました。
ここは保護者の方に特に聞いていただきたい部分です。「うちの子は何も話してくれない」と悩む方は多いのですが、話さないのは信頼していないからではありません。仲がいいからこそ言えない、ということがあります。
それでも中川さんのお母さまは、娘が本当に限界だと分かったとき、当時まだ情報も少ない中で通信制の学校という選択肢を探してきてくれたそうです。
質問1「最近一番楽しかったことは?」
ここから質疑応答です。生徒たちが次々と手を挙げました。
最初の質問は、いきなり核心を突くものではなく、こんな入口からでした。中川さんも一つひとつ、自分の経験を交えて答えてくださいました。
質問2「友達ってどうやったらできますか」
『友達って、作ろうとするとすごく難しいよね。私も何を喋っていいかわからない。でも友達は多ければいいわけじゃなくて、本当に話せる人が1人いればいい』
さらにこう続きました。
『どのタイミングでそういう人に出会えるかはわからない。大人になってから、仕事を始めてから出てくるかもしれない。友達によって話す内容を分けたっていい』
「いま友達がいない」ことと「これからもいない」ことは別だ、という話です。学校という限られた場所の中だけで友達を作らなければいけない、という前提が外れます。
質問3「考えすぎずに行動して失敗しちゃうんです」
自分の弱さを人前で言葉にするのは、大人でも簡単ではありません。この質問が出てきたこと自体に、場の安心感が表れていました。
質問4「人見知りで、本音で語り合える友達が欲しい」
質問2と重なる悩みですが、より切実な形で出てきました。中川さんは、一人ひとりの状況に合わせて答えを変えていました。
質問5「聞き上手になって、誰かに頼られる人になりたい」
この質問への答えが、この日いちばん心に残りました。
中川さんは、親友の木村さんとのエピソードを話してくださいました。
『中学の時、辛い状況にあった私のそばに、ただ一緒にいてくれた。私と一緒にいたら自分の立場が悪くなりそうなのに、気にしないでいてくれた』
大人になってから「なんであの時一緒にいてくれたの?」と聞いたら、「楽しかったからだよ」とさらっと言われたそうです。「でも一緒にいたら株が下がるじゃん」ともう一度聞くと、「私には他にも居場所があるから」と返ってきました。
木村さんは今も中川さんの大親友で、そのエピソードは道徳の教科書にも載っているそうです。
では、どうしたら木村さんのような人になれるのか。中川さんはご自身も「私も木村になりたいんです」と言っていて、「どうしたら木村になれるんでしょうね、本当に」と、答えを持っているわけではありませんでした。それでも生徒と一緒に考えながら、少しずつ言葉を紡いでくれました。
『人の意見じゃなくて、その人自身の素敵なところを見つけること。相手の話を否定しないで聞くこと。ただし全部に100%向き合うと自分が苦しくなってしまうから、息抜きが上手であること。そして自分自身も、自分の居場所で楽しくしていること』
正解を教えるのではなく、一緒に悩みながら紡ぎ出された言葉だったからこそ、生徒たちにもまっすぐ届いていたと思います。
誰かの味方でいるためには、まず自分が満たされていること。これは子どもたちだけでなく、僕たち大人、そして親御さんにも通じる話だと思いながら聞いていました。
この日、質問した生徒たちが通っているのが明光フリースクールと明光義塾高等学院です。講演会の準備や片付けも生徒たちが一緒にやってくれていて、中川さんから「すごいよ、絶対徳を積んでるよ」と声をかけてもらう場面もありました。
生徒たちの言葉
イベントの冒頭では、4月に入学した生徒がこう話してくれました。
『めちゃくちゃ楽しいです!この学校に来られたおかげで自分のキャパが広がったので、通学する日も増やすことにしました』
閉会時には、生徒代表からお礼の挨拶がありました。
『今日のお話を聞いて、今の人生も楽しいけれど、もっと楽しくなるように、自分で試行錯誤しながら考えていきたい』
壇上でのやりとりだけでなく、会場のいたるところで生徒たちの成長が見られた一日でした。

中川さんから、参加したみなさんへ
最後に、中川さんからのメッセージを紹介します。
『人生って、学校よりもずっと広い、宇宙そのものだと思うんです。1回しかない人生は、好きなことを見つけて、誰かと出会って、思い出を作る冒険。だとしたら、自分を攻撃してくる人や否定してくる人に時間を使うのはもったいない。笑顔になれる居場所を見つけていってほしい』
『とにかく今日を生きた。それを重ねた先に、「生きててよかった」って思える何かがきっと待っています。私は、学校に行けなかった当時の自分に「死なないで生きててくれてありがとう」って、今も毎日心から思っています』
『居場所は1つじゃないし、この先の未来に、まだ出会っていない誰かや、まだ出会っていない「大好き」がきっと待っている。他の人と比べて焦らなくていい』
そして、学校に行けない時間についてはこう話していました。
『学校に行けない時間があっても、それは何もしていない時間じゃない。好きなことを見つけたり、心を回復させたりすることも人生の一部。名前のない時間かもしれないけど、めちゃめちゃ栄養な時間だから』
この日のこと
講演会の様子は、明光みらいのnoteでも紹介しています。
>>【イベントレポ】中川翔子さん講演会 しょこたんからのメッセージ
生徒たちが自分の言葉で考えて、自分の言葉で質問する。その場をつくるために準備から片付けまで一緒にやる。こういう時間の積み重ねが、通う日数や成績には表れない変化をつくっていくのだと思います。
「うちの場合はどう進めればいい?」という段階でも大丈夫です。まずは話を聞いてみるだけでも、気持ちが少し軽くなるはずです。
