「朝、何度起こしても起きられない。それなのに夕方になると元気そうにしている」
このご相談を、本当によく受けます。そして多くの保護者の方が、心のどこかで「甘えているのではないか」と思ってしまい、そんな自分を責めています。
まずお伝えしたいことがあります。それは怠けではなく、体の病気かもしれません。 起立性調節障害という疾患です。
僕は約10年間の不登校を経験しました。当時はフリースクールで学び、現在は不登校の専門家として本を書いたり、2000人以上の子どもたちとご家庭をサポートしてきました。これまで2000人以上の子どもたちに関わってきましたが、この疾患のことを知らないまま何年も自分を責め続けていたご家庭を、何度も見てきました。
なお、僕は医師ではありませんので、この記事は日本小児心身医学会などの公的な情報をもとに整理したものです。この記事は不登校の専門家としての意見として読んでいただき、実際の診断と治療は必ず医療機関でお願いします。
起立性調節障害とは何か
起立性調節障害は、英語の頭文字をとってODとも呼ばれます。
立ち上がったときに、めまいや立ちくらみ、頭痛、倦怠感などの症状が出る病気です。原因は自律神経の調節がうまくいかなくなることにあります。
私たちが立ち上がるとき、重力に逆らって脳へ血液を送るために、自律神経が血圧や心拍数を調整しています。この働きに不調が生じると、起き上がったときに脳へ十分な血液が届かなくなります。これが「朝、起きられない」という状態を生みます。
起立性調節障害|一般社団法人日本小児心身医学会
https://www.jisinsin.jp/general/typical_diseases/起立性調節障害/
思春期に発症しやすく、小学校高学年から中学生に多く見られます。第二次性徴の時期と重なり、体のさまざまな機能が大人へと変化していく中で、自律神経も不安定になりやすいためです。
そして大切なのは、これは身体の病気であり、本人が頑張ればどうにかなるものではないということです。
不登校との関係は、想像以上に深い
数字を見ると、この疾患がいかに身近かがわかります。
日本小児心身医学会によると、**ODの有病率は軽症例も含めて中学生の約10%**にのぼります。そして、不登校の約3〜4割にODが併存していると言われています。
つまり、学校に行けない子どもの3人に1人前後は、この体の不調を抱えている可能性があるということです。
東京都も不登校支援のポータルサイトでこの疾患を取り上げています。
「起立性調節障害」って何?|TOKYO多様な学びの場・居場所ナビ
https://www.futoukouportal.metro.tokyo.lg.jp/column/post006/
なぜ「怠け」に見えてしまうのか
この疾患がやっかいなのは、症状の出方が誤解を招きやすいことです。
症状は午前中に強く出ます。だから朝はまったく動けません。ところが自律神経は「夜になると自然に眠くなる」というサイクルにも関わっているため、ODを発症するとそのサイクルが乱れ、夜になると意識が覚醒してきます。
その結果、朝はつらそうにしていたのに、夜は元気そうに見えるという状態になります。
事情を知らなければ、「夜にゲームしているから朝起きられないんだ」と見えてしまいます。順番が逆なのに、そう受け取られてしまう。これが子どもをさらに追い詰めます。
僕が当事者として一番つらかったのも、自分でもどうにもできないことを、意志の問題として責められることでした。体が動かないのに「気持ちの問題だ」と言われる。あの経験は、自己肯定感を根こそぎ奪います。
まず何をすればいいか
3つあります。
- 小児科を受診する 診断には新起立試験という検査が用いられます。横になった状態と起立後の血圧や心拍数の変化を測るものです。まずはかかりつけの小児科に相談し、必要に応じて詳しい検査ができる医療機関を紹介してもらってください。他の病気が隠れていないかを確認する意味でも受診は大切です。
- 「怠け」という言葉を家庭から消す 診断がつく前でも、これはすぐにできます。本人がいちばん「自分はダメだ」と思っています。そこに追い打ちをかけないでください。
- 学校に状況を共有する 診断がついた場合は、その情報を学校と共有してください。遅刻や早退への理解が得られやすくなり、本人の負担が大きく減ります。
「午後からなら動ける」を前提に環境を組み直す
ODの場合、午前中がつらくても午後は動けることが多いです。ここが環境選びの鍵になります。
学校は朝から始まる前提でできています。だから、朝に間に合わないというだけで学びの機会を丸ごと失ってしまうのは、あまりにもったいないです。
自治体によっては、公的な教育支援センターで午後の時間帯に対応している教室もあります。たとえば品川区の教育支援センター「マイスクール」には、起立性調節障害のお子さん向けに午後の支援を行う教室があります。お住まいの自治体の窓口に、時間帯について聞いてみてください。
また、自宅やフリースクールでの学習は、一定の要件を満たせば在籍校の出席扱いにできます。判断するのは在籍校の校長先生です。
不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)|文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422155.htm
体調に合わせて選べる3つの環境
僕たちが運営している場を紹介します。どれも、朝に間に合わないことを前提に組み立てられます。自分のペースで学べることが大切です。
クラスジャパン小中学園
まだ外に出るのが難しいお子さん向けのオンラインフリースクールです。ネットの先生が伴走し、自宅から自分のペースで学べます。 体調のいい時間帯に取り組めるので、ODのお子さんとは特に相性がいい形です。2018年の開校からこれまでに2000人以上をサポートしてきました。
学習教材に加えて、最先端のAIサポートもあります。生徒一人ひとりにカスタマイズされた学習AIを活用することで、わからない場面でつまずかずに答えまで辿り着くことができます。答えをすぐに教えるのではなく、ヒントを出しながら一緒に考えるAIなので、「わかった」という手応えが自分のものとして残ります。学習以外の用途には使えないフィルタリング設定が付いているので、安心してご利用いただけます。
クラスジャパン小中学園の詳細はこちら
https://www.cjgakuen.com/
明光フリースクール
平日の日中に通えるフリースクールです。明光義塾の個別指導がベースにあるので、一人ひとりのつまずきを見つけて、そこから戻る学び方ができます。学習だけでなくプログラミングやeスポーツなどもあり、「学校ではないけれど通う場所」として機能します。学校の出席扱いや自治体の補助金対象になる実績も多数ございます。
体調に合わせた通い方について、まずは相談してみてください。新規の校舎もどんどん展開していますので、お近くの教室についてはまずはお問い合わせください。
明光フリースクールの詳細はこちら
https://freeschool.meikogijuku.jp/
明光義塾高等学院
高校段階での選択肢です。全国の明光義塾教室との連携で、中学範囲の戻り学習から大学受験対策まで一続きで見られるのが特徴です。通学の日数や時間帯に融通がきくため、朝が苦手なお子さんでも進路を諦めずに済みます。
明光義塾高等学院の詳細はこちら
https://gakuin.meikogijuku.jp/
まとめ。責めるのをやめることが治療の第一歩
朝起きられないのは、意志の弱さではありません。中学生の約10人に1人が抱えている体の不調かもしれません。
まず医療機関を受診してください。そして診断の有無にかかわらず、「怠けている」という見方を家庭から手放してください。 ストレスは症状を悪化させる大きな要因です。責められる環境にいる限り、体調は良くなりません。
そのうえで、朝に間に合わないことを前提にした学びの場を探してみてください。時間帯を変えるだけで、学びも人との関わりも取り戻せます。
「うちの子はどうしたらいいのか」という相談は、僕の公式LINEでも受け付けています。医療的なことにはお答えできませんが、環境の選び方については一緒に考えられます。
小幡和輝の無料LINE相談はこちら
https://www.obatakazuki.com/lp
よくある質問
起立性調節障害とは何ですか?
立ち上がったときにめまいや立ちくらみ、頭痛、倦怠感などの症状が出る病気で、自律神経による血圧や心拍数の調節がうまくいかなくなることが原因です。思春期に発症しやすく、小学校高学年から中学生に多く見られます。身体の病気であり、本人の頑張りで解決するものではありません。
起立性調節障害と不登校にはどのような関係がありますか?
日本小児心身医学会によると、有病率は軽症例も含めて中学生の約10%で、不登校の約3〜4割に起立性調節障害が併存していると言われています。午前中に症状が強く出るため、遅刻や欠席が増えて不登校につながることがあります。
朝は起きられないのに夜は元気なのはなぜですか?
自律神経は夜になると自然に眠くなるサイクルにも関わっているため、起立性調節障害を発症するとそのサイクルが乱れ、夜に意識が覚醒しやすくなります。その結果、朝はつらそうなのに夜は元気に見えるという状態になり、怠けているという誤解を招きやすくなります。
