「教室がうるさくて疲れる」「先生の大きな声が怖い」「友だちがけんかしていると自分のことみたいにつらい」。繊細な子(HSC)が学校に行きたくないと言い出すとき、理由を聞いても本人もうまく説明できないことが多く、親は「わがままなのか、本当につらいのか」の判断に迷います。
結論から書きます。HSCの子が学校に行きづらいとき、まずやるべきは「行かせるか休ませるか」を決めることではなく、その子が受けている刺激の総量を減らすことです。刺激が減ると、本人のエネルギーが戻り、学びも人との関わりも自分から再開しやすくなります。この記事では、HSCそのものの解説は最小限にして、家庭でできる刺激の調整、学校への伝え方、家で過ごす期間の学びの続け方を具体的に書きます。
約10年間の不登校を経験した小幡和輝です。当時の僕を支えてくれた場所がフリースクールでした。いまはそれを運営する側として、本を書いたり、2000人以上の子どもたちとご家庭に関わっています。
HSCは病気ではなく気質。だから「治す」より「環境を合わせる」
HSC(Highly Sensitive Child)は、アメリカの心理学者エレイン・アーロン氏が提唱した「ひといちばい敏感な子」という概念です。医学的な診断名ではなく、生まれ持った気質の一つとされ、おおよそ5人に1人が該当すると言われています。
特徴は4つにまとめられることが多いです。
- 深く考える 一つの出来事を何通りにも受け止め、先回りして心配する
- 刺激を受けやすい 音、光、におい、人の多さで疲れやすい
- 感情の反応が強い 自分のことも他人のことも強く感じ取る。叱られている子を見て自分が泣いてしまう
- ささいな変化に気づく 先生の機嫌、教室の空気、時間割の変更にすぐ気づく
大事なのは、これらが「弱さ」ではなく「感度の高さ」だという点です。感度が高いぶん、学校という刺激の多い場所では人より早く電池が切れます。だから対応の方向は「慣れさせる」ではなく「受け取る刺激の量を調整する」になります。
なお、HSCの特徴は発達特性や不安の症状と重なって見えることもあります。朝の腹痛や頭痛、眠れない日が続くなど体の症状が出ているときは、自己判断で「HSCだから」と決めつけず、小児科やスクールカウンセラー、自治体の教育相談など専門機関に相談してください。
学校がつらくなるのは「嫌いな授業」ではなく「刺激の総量」
HSCの子の行き渋りで見落とされやすいのが、きっかけになった出来事と、本当の原因が別だということです。
たとえば「体育の時間に先生に大声で注意されてから行けなくなった」という相談があったとします。親も学校も体育と先生に注目しますが、実際にはその前から、朝の登校班のざわつき、給食の時間のにおい、休み時間の鬼ごっこの誘いを断れないこと、帰りの会で誰かが叱られる場面、と一日中刺激を受け続けて、夕方には使い切っていた。そこへ大声が来て、コップの水があふれた。こういう構造がよくあります。
だから「体育を見学させてもらえば戻れる」と一点だけ直しても、別のところであふれます。見るべきは一点ではなく、朝起きてから寝るまでに受けている刺激の合計です。
僕自身の話をすると、親から言われていちばんきつかったのは「いつまで休むの」という一言でした。逆に「あなたが元気ならそれでいい」と言われた日から、家が安全な場所になりました。HSCの子にとって家は、刺激を使い切った電池を充電する唯一の場所です。そこで責められると、充電できる場所がなくなります。
家庭でできる刺激の棚卸し。4つの調整
まず1週間でいいので、「今日はどこで疲れたか」を子どもと一緒に振り返ってみてください。責める場ではなく、刺激の地図を作る作業です。そのうえで、減らせるものから減らします。
- 音と光を減らす 家の中でテレビをつけっぱなしにしない、夕方以降は照明を少し落とす、静かに一人になれる場所(押し入れでも、机の下でもいい)を決めておく。外出時に音がつらければイヤーマフやノイズキャンセリングイヤホンを試す
- 見通しを先に渡す 予定の変更に弱いので、明日の予定、週末の予定、来客の有無を前もって伝える。「明日は何があるか」を寝る前に一緒に確認するだけで朝の抵抗が減る子は多い
- 休む時間を「予定」として入れる 学校や外出のあとに何もしない時間を先に確保する。習い事を詰め込まない。「帰ってから30分は声をかけない」と家族で決めてもいい
- 叱る量より、叱る音量を下げる HSCの子は叱られた内容より、声の大きさや表情のほうを強く受け取ります。伝えたいことがあるときは、近くで、普通の声で、短く。きょうだいを叱る声も同じように響いていることを意識する
4つとも、お金も特別な制度もいりません。今日から変えられます。そして、刺激が減って本人のエネルギーが戻ってきたかどうかは、「自分から何かをやりたがるか」で見えます。
学校に伝えるときの言い方。「敏感な子なんです」では伝わらない
担任に「うちの子はHSCで」と伝えても、学校側は何をすればいいのかわからないことが多いです。気質の名前ではなく、具体的な場面と、具体的なお願いで伝えます。文例を置いておきます。
「教室のざわつきで疲れやすい子です。可能なら座席を廊下側や壁際にしてもらえますか」
「予定の変更に不安が強いので、時間割が変わるときは前日までに連絡帳で教えてもらえると助かります」
「大きな声で注意されると、内容より声の大きさに固まってしまいます。本人に伝えるときは近くで普通の声でお願いしたいです」
「つらくなったときに一度抜けられる場所(保健室、相談室、図書室)を本人と先生で決めておいてもらえますか」
お願いは一度に全部でなくていいです。いちばん効きそうな1つか2つに絞って伝え、効果を見てから次を足します。学校との連携がうまくいかないときの相談先や、担任以外の窓口については、こちらの記事で解説しています。
https://freeschool.meikogijuku.jp/media/gakko-awanai-kodomo/
行き渋りの段階で早めに気づくサインについては、こちらの記事にまとめています。
https://freeschool.meikogijuku.jp/media/futoko-zencho-sign/
家で過ごす期間の学びと「出席扱い」
刺激を減らした結果、しばらく家で過ごす期間ができることがあります。ここで親がいちばん心配するのが勉強の遅れですが、HSCの子は刺激さえ減れば集中力も理解力も高いことが多く、静かな環境のほうが学習は進みやすいです。
そして、家で学ぶこと自体が学校の欠席扱いのままになるとは限りません。文部科学省は、不登校の児童生徒が自宅でICT等を使って学習した場合、一定の要件を満たせば校長の判断で出席扱いにできるとしています。
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422155.htm
要件の中身や、学校への相談の進め方はこちらの記事で詳しく解説しています。
https://freeschool.meikogijuku.jp/media/shusseki-atukai/
文部科学省の調査では、2024年度(令和6年度)の小中学校の不登校児童生徒数は353,970人で過去最多です。一方で「新たに不登校になった子」の数は9年ぶりに減っています。学校に行けない期間があること自体は、もう特別なことではありません。
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1302902.htm
クラスジャパン小中学園という選択肢
刺激の少ない自宅で、学びと人とのつながりを両方確保したいご家庭に向けて、僕たちはオンラインフリースクール「クラスジャパン小中学園」を運営しています。
HSCの子にとって、オンラインは単なる代替ではなく、相性のいい環境です。教室のざわつきも、においも、予定の急な変更もなく、自分の部屋の慣れた刺激の中で学べます。ネットの先生(担任)が一人ひとりに伴走するので、「家で一人で学ぶ」状態にはなりません。先生とのやりとりも、いきなり大人数の前で話す必要がなく、自分のペースで関係を作れます。2018年の開校から、これまでに2000人以上の不登校の子どもたちをサポートしてきました。
学習面では、生徒一人ひとりにカスタマイズされた最先端のAIサポートがあります。答えをすぐ教えるのではなく、ヒントを出しながら一緒に考えるAIなので、わからない場面で固まってしまいやすい子でも、誰かに見られる緊張なしに自分で答えまで辿り着けます。学習以外の用途には使えないフィルタリング設定付きで安心です。
一定の要件を満たせば在籍校の出席扱いになります。出席扱いの制度はクラスジャパンが先駆けとなって、学校や自治体と一緒につくってきました。
クラスジャパン小中学園の詳細はこちら
https://www.cjgakuen.com/
今日できる一歩
今夜、寝る前に「明日は何がある日か」を子どもと一緒に確認してみてください。学校に行く日でも、休む日でも構いません。見通しが一つ渡るだけで、HSCの子の朝は少し変わります。そして「今日はどこで疲れた?」を一つだけ聞いて、答えをそのまま受け取ってください。直さなくていいです。地図を作るだけです。
まとめ
HSCは病気ではなく気質です。直す対象ではなく、環境を合わせる対象です。学校に行きづらいときは「行く・行かない」の二択に急がず、音と光、見通し、休む時間、叱る音量の4つから刺激の総量を減らしてください。学校には気質の名前ではなく、具体的な場面と具体的なお願いで伝える。家で過ごす期間の学びは、要件を満たせば出席扱いになる道もあります。
「うちの場合はどう進めればいい?」という段階でも大丈夫です。まずは話を聞いてみるだけでも、気持ちが少し軽くなるはずです。
無料LINE相談はこちら
https://www.obatakazuki.com/lp
よくある質問
HSCかどうか、どうやって確かめればいいですか
HSCは医学的な診断名ではないので、病院で診断されるものではありません。提唱者のチェックリストなどが参考になりますが、自己判断で決めつけず、体の症状や強い不安が続く場合は小児科、スクールカウンセラー、自治体の教育相談に相談してください。
刺激を減らすと、かえって学校に戻れなくなりませんか
刺激を減らすのは「逃がす」ためではなく、使い切った電池を充電するためです。エネルギーが戻ると、自分から外に向かう子がほとんどです。戻る先が元の学校とは限りませんが、それは後退ではなく、その子に合う環境を選び直すということです。
家で学ぶと出席扱いにはなりませんか
文部科学省は、自宅でICT等を使った学習について、一定の要件を満たせば校長の判断で出席扱いにできるとしています。在籍校との相談が必要ですが、家で学びながら出席扱いを受けている事例があります。
