「通信制高校の授業料は無償になると聞いたけれど、教材費や入学時の費用が心配」「奨学金を使いたいが、通信制高校でも対象になるのかわからない」。学費の相談を受けていると、こうした声をよく聞きます。
先に結論です。通信制高校で使える奨学金・給付金はあります。柱は、返さなくてよい「高校生等奨学給付金」です。
令和8年度から対象が年収490万円程度の世帯まで広がり、通信制の生徒も対象に入っています。
これに、都道府県などの高校生向け奨学金、社会福祉協議会の教育支援資金、ひとり親家庭向けの修学資金が加わります。
大事なのは、どれも申請しないと1円も届かないことと、授業料を支える就学支援金とは別の手続きだということです。この記事は、就学支援金「以外」の制度に絞って、通信制高校で使えるものを一覧にし、申請の流れまで整理します。
自己紹介が遅れました。小幡和輝と申します。僕は不登校の元当事者です。約10年間学校に行かず、フリースクールで学びました。現在は不登校の専門家として、本の執筆や講演をしながら、2000人以上の子どもたちとご家庭をサポートしています。通信制高校の連携施設である明光義塾高等学院の学院長も務めています。
通信制高校で使える奨学金・給付金の一覧
まず全体像です。返す必要があるかどうかと、窓口がどこかで分けて見てください。
| 制度 | 返済 | 対象の目安 | 窓口 |
|---|---|---|---|
| 高校生等奨学給付金 | 不要 | 年収490万円程度までの世帯 | 都道府県または学校 |
| 学び直しへの支援 | 不要 | 高校を中退して入り直した人 | 学校 |
| 都道府県・市区町村の高校生向け奨学金 | 制度による | 自治体ごとに異なる | 自治体・学校 |
| 教育支援資金(生活福祉資金) | 必要(無利子) | 低所得世帯 | 市区町村の社会福祉協議会 |
| 母子父子寡婦福祉資金の修学資金 | 必要(無利子または年1.0%) | ひとり親家庭など | 自治体のひとり親福祉の担当課 |
よくある誤解を1つ。大学生がよく使う日本学生支援機構の奨学金は、大学や専門学校などが対象で、高校生は申し込めません。高校生の奨学金は、国ではなく都道府県や市区町村、民間の団体が担っています。
就学支援金との違い。支える費用が別
就学支援金と奨学給付金は名前が似ていますが、支える費用が違います。
- 高等学校等就学支援金 授業料を支える制度。令和8年度から所得制限がなくなった。学校が代わりに受け取って授業料に充てる
- 高校生等奨学給付金 教科書費、教材費、学用品費、通信費など、授業料以外の教育費を支える制度。保護者に現金で支給される
つまり「授業料は就学支援金、それ以外は奨学給付金」という分担です。文部科学省のリーフレットにも、2つは別々に申し込みが必要だと明記されています。[1] 入学時に就学支援金の手続きをしただけで安心してしまい、給付金を申請し忘れるご家庭が少なくありません。
就学支援金の仕組みと、授業料がどこまで下がるかは、こちらの記事にまとめています。
>>通信制高校の学費は実際いくら?2026年度の所得制限撤廃でどこまで下がるのか
高校生等奨学給付金。令和8年度の通信制の金額
令和8年度から、これまでの生活保護世帯・住民税非課税世帯に加えて、年収270万円から490万円程度の世帯も対象になりました。通信制課程の年額は次のとおりです。[1]
| 世帯の区分(年収は目安) | 国公立の通信制 | 私立の通信制 |
|---|---|---|
| 生活保護世帯 | 3万2,300円 | 5万2,600円 |
| 住民税非課税世帯(270万円未満) | 5万500円 | 5万2,100円 |
| 270万円〜380万円 | 1万6,830円 | 1万7,370円 |
| 380万円〜490万円 | 1万2,630円 | 1万3,030円 |
年収の目安は、両親の一方が働き、高校生1人と中学生1人がいる4人世帯の場合です。実際の判定は年収ではなく、保護者全員の住民税の所得割額の合計で行われます。
拡充部分の区分は、所得割額100円以上10万5,500円未満と、10万5,500円以上18万2,500円未満の2段階です。所得割額はマイナポータルの「わたしの情報」で確認できます。
全日制より金額は小さいものの、教科書代やレポート学習の通信費をまかなえる額です。返さなくてよいお金なので、対象になりそうなら必ず申請してください。
申請の流れと時期
- 対象か確認する 保護者全員の課税証明書かマイナポータルで、住民税の所得割額を確認する
- 窓口を確認する お住まいの都道府県か、在学する学校。私立か公立か、県外の学校かで窓口が変わることがある
- 申請書と証明書類を出す 課税証明書または非課税証明書などを添える。必要書類は都道府県で異なる
- 支給を受ける 保護者の口座に振り込まれる
基準日は7月1日で、手続きの開始時期は都道府県ごとに違います。新入生は4月から6月に一部を早めに受け取る申請ができます。保護者の病気や離職で収入が急に減った場合は、家計急変の支援もあります。7月1日までの申請なら年額、7月2日以降なら月割りの額です。
通信制高校で気をつけたいのは、申請先が「学校のある県」ではなく「保護者が住んでいる都道府県」になる点です。
広域の通信制高校に県外から在籍していると、学校から案内が届かないことがあります。
文部科学省は都道府県ごとの問い合わせ先の一覧を公開しているので、案内が来ない場合は自分から都道府県に確認してください。[2]
学費の見通しを立てながら、学習の伴走も1か所で受けたい方は、こちらも参考にしてください。
>>全国の明光義塾教室で学びながら高校卒業を目指す方法を見る
中退や転入を経験した人が知っておきたい「学び直しへの支援」
通信制高校には、前の高校を中退して入り直す人がたくさんいます。ここで問題になるのが、就学支援金の支給期間です。在学期間が通算36か月(定時制・通信制は48か月)を超えると、就学支援金は受け取れなくなります。
これを補うのが学び直しへの支援です。高校を中退したあと再び高校で学び直す人に、就学支援金の期間が終わったあとも、卒業まで最長12か月、定時制・通信制なら最長24か月、授業料の支援が続きます。令和8年度の新制度では所得制限がなく、年33万7,200円が上限です。[3]
入学や編入の相談のときに「前の高校の在籍期間は〇か月です。就学支援金は卒業まで足りますか」と聞いてください。高校中退後の進路全体は、こちらの記事で整理しています。
>>高校を中退したその後の進路。通信制高校への編入で卒業資格を取り直す方法
貸与型の制度。借りる前に順番を確認する
給付金だけでは足りないときの選択肢です。返済が必要なので、給付型を先に使い切ってから検討してください。
- 都道府県・市区町村の高校生向け奨学金 貸与型が中心で、給付型を持つ自治体もある。金額や要件は自治体ごとに違い、通信制課程を対象に含むかどうかも制度による。文部科学省は、日本学生支援機構のサイトに自治体の奨学金情報が掲載されていると案内している[4]
- 教育支援資金 社会福祉協議会の生活福祉資金の1つ。低所得世帯が対象で、高校は月3万5,000円以内の教育支援費と、入学時の50万円以内の就学支度費がある。無利子で、返済は卒業後6か月以内の据置のあと20年以内[5]
- 母子父子寡婦福祉資金の修学資金・就学支度資金 ひとり親家庭などが対象。無利子または年1.0%で、貸付の約9割が子どもの修学関係に使われている[6]
制度は、知らせてもらえるとは限らない
お金の制度でいちばんもったいないのは、対象なのに知らずに使わないことです。
僕たちが運営する明光フリースクールでも、似た場面がありました。フリースクールへの通学定期券は文部科学省の通知に基づく制度ですが、駅の窓口で「学校ではないので出せません」と断られたご家庭がありました。スタッフがご家庭と一緒に交通事業者へ制度を説明し、購入につながった事例があります。
制度があっても、現場のすべての人が知っているわけではありません。奨学給付金も同じで、学校からの案内プリント1枚を見落とせば、その年の分は受け取れなくなります。「案内を待つ」のではなく「自分から聞く」。これだけで結果が変わります。
なお、就学支援金は学校である通信制高校の授業料が対象で、学校ではないサポート校の費用は対象になりません。
>>通信制高校とサポート校の違い。学費は二重にかかる?後悔しないための選び方
明光義塾高等学院という選択肢
奨学金や給付金を調べているご家庭は、「通信制高校に入れたあと、さらに塾代がかかったらどうしよう」という不安も抱えています。その不安に対する1つの形として、僕が学院長を務める明光義塾高等学院を紹介させてください。通信制高校の連携施設で、高校卒業資格を目指しながら日々の学びを進める場所です。
全国の明光義塾教室との連携で、中学範囲の戻り学習から大学受験対策まで一続きで見られるのが特徴です。『まず中2の数学からやり直したい』という相談も当たり前のこととしてサポートしています。
お金の面で見たときの良さは、学習の伴走を別の塾で買い足さずに済むことです。通信制高校で勉強が続かなくなり、あとから塾や家庭教師を追加するご家庭は少なくありません。近所の明光義塾教室に通い、講師がレポートの進み具合まで見る形なら、費用の全体像を入学前に見通せます。
学力試験は行わず、面接で入学を判断しています。年度の途中からの入学も受け付けていますが、募集定員があります。具体的な費用の内訳は資料請求でお伝えしているので、この記事の一覧と並べて、わが家の場合の総額を確認してみてください。
>>【明光義塾高等学院】明光義塾との連携コースの資料請求はこちら
今日できる一歩
マイナポータルを開いて、「わたしの情報」から保護者の住民税の所得割額を確認してください。
保護者全員分の合計が18万2,500円未満なら、令和8年度の高校生等奨学給付金の対象になる可能性があります。
数字をメモしておけば、学校や都道府県に問い合わせるときに「所得割額は〇円です。対象になりますか」と一言で聞けます。
まとめ
通信制高校で使える奨学金・給付金の中心は、返還不要の高校生等奨学給付金です。令和8年度から年収490万円程度の世帯まで対象が広がり、通信制は世帯の区分に応じて年1万2,630円から5万2,600円が支給されます。就学支援金とは別の申請が必要で、窓口は保護者が住んでいる都道府県か学校です。
中退から入り直した人には学び直しへの支援があり、足りない分は自治体の奨学金、教育支援資金、ひとり親家庭向けの修学資金という順で検討できます。金額や要件は年度で変わるので、申請の前に必ず最新の案内で確認してください。
お子さんを責める必要も、ご自身を責める必要もありません。今日からできる小さな一歩を、一緒に探しましょう。
よくある質問
通信制高校でも奨学金や給付金は使えますか?
使えます。返還不要の高校生等奨学給付金は通信制課程も対象で、令和8年度は世帯の区分に応じて年1万2,630円から5万2,600円が支給されます。ほかに自治体の高校生向け奨学金、社会福祉協議会の教育支援資金、ひとり親家庭向けの修学資金があります。日本学生支援機構の奨学金は高校生は対象外です。
高校生等奨学給付金と就学支援金は何が違いますか?
就学支援金は授業料を支える制度で、学校が代わりに受け取ります。高校生等奨学給付金は教科書費や教材費など授業料以外の教育費を支える制度で、保護者に支給されます。2つは別々に申し込みが必要です。就学支援金の手続きをしても、給付金は自動では支給されません。
高校生等奨学給付金はいつ、どこに申請しますか?
保護者が住んでいる都道府県または在学する学校に申請します。基準日は7月1日で、新入生は4月から6月に一部を早めに受け取る申請ができます。手続きの開始時期は都道府県ごとに違います。県外の通信制高校に在籍していて案内が届かない場合は、お住まいの都道府県に確認してください。
出典
- 文部科学省「高校生等奨学給付金リーフレット」(令和8年度) PDF 本文へ戻る
- 文部科学省「高校生等奨学給付金(専攻科含む)のお問合せ先一覧」 ページ 本文へ戻る
- 文部科学省「高校等で学び直す者に対する修学支援」(令和8年度予算) PDF 本文へ戻る
- 文部科学省「高校生等への修学支援」 ページ 本文へ戻る
- 厚生労働省「生活福祉資金貸付条件等一覧」 ページ 本文へ戻る
- こども家庭庁「ひとり親家庭等の支援について 4. 経済的支援」(母子父子寡婦福祉資金貸付金) PDF 本文へ戻る
