気づけば子どもが明け方まで起きていて、昼過ぎまで眠っている。声をかけても起きない。不登校のご家庭から、いちばんよく聞く悩みのひとつが昼夜逆転です。
最初に結論をお伝えします。昼夜逆転は、寝る時間を早くしようとするとほぼ失敗します。うまくいくのは、起きる時間を先に固定して、朝に小さな用事をつくるやり方です。この記事では、その手順を5つのステップで具体的に解説します。
あわせて知っておいてほしいのは、昼夜逆転は怠けやだらしなさではなく、不登校に伴ってごく普通に起きる現象だということです。文部科学省の委託調査でも、不登校の子ども本人の7割前後が「夜眠れない・朝起きられない」といった不調を訴えています。
申し遅れました。不登校の専門家の小幡和輝です。僕は約10年間の不登校を経験しました。当時はフリースクールで学び、現在は不登校の専門家として本を書いたり、2000人以上の子どもたちとご家庭をサポートしてきました。
昼夜逆転は不登校の子の「多数派」。データが示す実態
まず、責める前に知ってほしい数字があります。
文部科学省の委託事業として令和6年3月に公表された「不登校の要因分析に関する調査研究」では、不登校の子ども本人への調査で、「からだの不調」「気持ちの落ち込み・いらいら」「夜眠れない・朝起きられない」といった体調・メンタル・生活リズムの不調が、それぞれ7割前後に見られました。
そしてこの調査には、もうひとつ重要な結果があります。同じ項目について教師の回答は2割弱にとどまっていたのです。つまり、子どもの睡眠や体調の不調は、学校の先生にはほとんど見えていません。「先生はうちの子の状態をわかってくれているはず」という前提は、残念ながら成り立たないことが多い。だからこそ、家庭から学校へ状態を伝えることに意味があります。
不登校の要因分析に関する調査研究 結果の概要|文部科学省
https://www.mext.go.jp/content/20251120-mxt_jidou02-100002768_2.pdf
なぜ昼夜逆転するのか。夜は子どもにとって安全な時間
原因は大きく3つ重なっています。
- 時間割がなくなる 学校に行っていれば、起床・給食・下校という外側の枠が体内時計を毎日リセットしてくれます。不登校になるとこの枠が消えるので、リズムは放っておけば後ろへずれていきます
- 夜のほうが心が楽 平日の昼間は、登校している同級生や近所の目を意識してしまう時間です。逆に夜は、誰も学校の話をしないし、誰にも会いません。夜更かしは逃避ではなく、心を守るための避難と考えたほうが実態に合っています
- 体の病気が隠れていることがある 朝起きられない背景に、起立性調節障害という体の病気があるケースは珍しくありません。立ちくらみや朝の頭痛・腹痛が続くなら、生活習慣の問題と決めつけずに医療機関に相談してください
起立性調節障害については、こちらの記事で詳しく解説しています。
https://freeschool.meikogijuku.jp/media/kiritsusei-chosetsu-shogai-futoko/
ゲームやスマホが原因だと考える方も多いのですが、順番はむしろ逆で、昼間に居場所と役割がないから夜のゲームが生活の中心になる、というケースがほとんどです。
僕自身、不登校の間にやったゲームの時間は合計3万時間くらいです。ただ、そのゲームの大会を自分で企画したことが、人を集めて何かをやる原体験になり、18歳での起業につながりました。もしあのとき親がゲームを取り上げていたら、リズムが戻るどころか、部屋の中の唯一の楽しみと人とのつながりを失っていたと思います。取り上げるのではなく、後で書くように付き合い方を一緒に決めるのが現実的です。
生活リズムを戻す現実的な5ステップ
ステップ1。戻す時期かどうかを見極める
いちばん大事なのはここです。不登校の初期で、子どもが学校のことに触れられただけで表情が硬くなるような時期は、リズムを戻す時期ではありません。まずは心のエネルギーの回復が先で、睡眠はその回復手段でもあります。
目安として、家の中での会話が増えてきた、好きなことに没頭できている、退屈そうにしている時間が出てきた。こうしたサインが見えてから始めたほうが、結果的に早く戻ります。
ステップ2。夜ではなく朝を固定する
「早く寝なさい」が効かないのは、眠くないのに布団に入っても眠れないからです。人間の体内時計は、寝る時間ではなく起きた時間と浴びた光で決まります。
だから手をつけるのは朝だけでいいです。現在の起床時間から、15〜30分ずつ起きる時間を前にずらしていきます。昼の2時に起きているなら、まず1時半。1週間できたら1時。一気に7時を目指すと必ず反動が来ます。数週間から数か月かけるつもりの、地味な作戦がいちばん確実です。
ステップ3。起きたら光を浴びて、何か食べる
起きる時間とセットで、カーテンを開けて光を浴びること、少しでも何か食べることを習慣にします。光と朝食は体内時計をリセットする2大スイッチです。
なお、厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、小学生は9〜12時間、中学生・高校生は8〜10時間の睡眠が推奨されています。夜中の3時に寝ている中学生が8時間眠れば、起きるのは昼の11時。つまり昼まで寝ているのは過眠ではなく、必要な睡眠時間を確保しているだけ、という見方もできます。責める材料ではなく、逆算の材料にしてください。
睡眠対策(健康づくりのための睡眠ガイド2023)|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/suimin/index.html
ステップ4。午前中に小さな用事をつくる
起きる時間を決めても、起きる理由がなければ続きません。学校の時間割の代わりになる、朝の小さな用事をつくります。
犬の散歩、朝ドラを一緒に見る、コンビニに朝ごはんを買いに行く、オンラインの朝の会に出る。内容は何でもよくて、条件は「本人が嫌がらないこと」と「毎日ほぼ同じ時間にあること」の2つだけです。用事といっても勉強である必要はまったくありません。むしろ最初に勉強を置くと、用事ごと拒否されがちです。
ステップ5。夜のデジタルは取り上げずにルールを一緒に決める
夜更かしの相棒になっているスマホやゲームは、没収すると親子関係ごと壊れやすいです。おすすめは、本人と一緒に「終わりの時間」を決めること。オンラインの友だちと遊んでいるなら、その相手と遊べる時間帯も考慮に入れると、本人が守れるルールになります。親が一方的に決めたルールは破られますが、自分で決めたルールは案外守られます。
戻らない時期があっても大丈夫
ここまで書いておいて矛盾するようですが、5ステップを試してもうまくいかない時期はあります。そういうときは、いったんリズムの修正をやめてかまいません。
昼夜逆転そのものが子どもを壊すわけではありません。危ないのは、リズムを巡って毎日親子がぶつかり、家が安心できない場所になることのほうです。リズムは崩れたり戻ったりを繰り返しながら、本人に昼間の居場所や目標ができたタイミングで一気に戻ることがよくあります。僕が運営の現場で見てきた子どもたちも、きっかけはたいてい「朝起きたくなる理由」ができたときでした。
昼間の時間の組み立て方は、こちらの記事で詳しく書いています。
https://freeschool.meikogijuku.jp/media/futoko-nitchu-sugoshikata/
朝の用事づくりに、オンラインフリースクールという選択肢
ステップ4の「毎日ほぼ同じ時間にある、本人が嫌がらない用事」として、実際にいちばん機能しやすいのがオンラインフリースクールです。家から出る必要がないので、外出のハードルと関係なく朝の枠をつくれます。
クラスジャパン小中学園は、ネットの先生(担任)が一人ひとりに伴走するオンラインフリースクールです。2018年の開校から2000人以上の不登校の子どもたちをサポートしてきました。担任との日々のやりとりが生活リズムの立て直しの支えになりますし、学習には生徒ごとにカスタマイズされた最先端のAIサポートがあります。答えをすぐ教えるのではなくヒントを出しながら一緒に考えるAIで、学習以外の用途には使えないフィルタリング設定付きなので、夜のスマホ問題を悪化させる心配もありません。一定の要件を満たせば在籍校の出席扱いになる仕組みも整っています。
クラスジャパン小中学園の詳細はこちら
https://www.cjgakuen.com/
外に出る元気が戻ってきた子には、平日の日中に通える明光フリースクールもあります。通う曜日があること自体が、時間割の代わりになって生活リズムを支えてくれます。個別のサポートに加えてプログラミングやeスポーツなど、朝起きたくなる理由になりやすいコンテンツがあるのも特徴です。新規の校舎もどんどん展開していますので、お近くの教室についてはまずはお問い合わせください。
明光フリースクールの詳細はこちら
https://freeschool.meikogijuku.jp/
まとめ。夜を責めず、朝を整える
昼夜逆転は不登校の子の多数派で、怠けではありません。戻すときは、心のエネルギーが回復してきたタイミングで、寝る時間ではなく起きる時間を15〜30分ずつ前にずらし、朝の光と食事、そして朝の小さな用事をセットにする。夜のゲームやスマホは取り上げずに、本人とルールを決める。これが現実的な手順です。
今日できる一歩として、まず今夜は何も言わずに、明日の朝カーテンを開けるところから始めてみてください。そして子どもが起きてきたら、時間が何時でも「おはよう」とだけ声をかける。リズムの立て直しは、朝が責められない時間になることから始まります。
「うちの場合はどう進めればいい?」という段階でも大丈夫です。僕の公式LINEでは不登校に関する情報発信や無料相談を行っています。まずは話を聞いてみるだけでも、気持ちが少し軽くなるはずです。
小幡和輝の無料LINE相談はこちら
https://www.obatakazuki.com/lp
よくある質問
不登校の昼夜逆転は無理にでも直すべきですか?
不登校の初期など心のエネルギーが回復していない時期に無理に直そうとすると、親子の衝突が増えて逆効果になりがちです。会話が増える、好きなことに没頭できるなど回復のサインが見えてから、起きる時間を15〜30分ずつ前にずらす方法で少しずつ整えるのが現実的です。
昼夜逆転の生活リズムはどうやって戻せばいいですか?
寝る時間を早めるのではなく、起きる時間を先に固定するのがコツです。起床後に朝の光を浴びて何か食べることで体内時計がリセットされます。あわせて、散歩やオンラインの朝の会など、毎日ほぼ同じ時間にある本人が嫌がらない朝の用事をつくると続きやすくなります。
夜中までゲームをしています。取り上げたほうがいいですか?
没収は親子関係を壊しやすくおすすめしません。昼間に居場所や役割がないために夜のゲームが生活の中心になっているケースが多いので、本人と一緒に終わりの時間のルールを決めつつ、朝や昼間の居場所づくりを並行して進めるほうが結果的にリズムは戻りやすくなります。
