毎朝ちゃんと家を出ている。欠席日数もそんなに多くない。それなのに、日曜の夜になると表情が沈む。保健室に行く回数が増えている。帰ってきても学校の話をしない。「うちの子は不登校ではないけれど、このままで大丈夫なんだろうか」。隠れ不登校という言葉を検索したのは、そんな違和感からではないでしょうか。
先に結論をお伝えします。隠れ不登校とは、学校には行っているけれど教室に入れていない、あるいは教室にいても心の中では学校がつらいという状態を指す言葉です。
正式な用語ではなく、日本財団の調査で使われた「不登校傾向」という分類が、報道を通じてこの呼び方で広まりました。
そして大事なのは、欠席日数が年間30日に届いていなくても、使える支援はすでにあるということです。30日を待つ必要はありません。
自己紹介が遅れました。小幡和輝と申します。僕は不登校の元当事者です。約10年間学校に行かず、フリースクールで学びました。
現在は不登校の専門家として、本の執筆や講演をしながら、2000人以上の子どもたちとご家庭をサポートしています。
この記事では、隠れ不登校の実態を数字で整理し、4つのタイプ別のチェック、そして今の段階から動かせる具体的な手段までを書きます。
隠れ不登校とは。統計に出てこない「不登校傾向」のこと
文部科学省の調査で「不登校」として数えられるのは、病気や経済的理由以外で年間30日以上欠席した子どもです。令和6年度の調査では、小中学校で353,970人が不登校とされ、12年連続の増加となりました。[1]
裏を返せば、欠席が29日までの子は、どれだけつらくても統計には一人も出てきません。 ここに入る子どもたちが、隠れ不登校と呼ばれています。
その規模を推計したのが、日本財団が2018年10月に行った「不登校傾向にある子どもの実態調査」です。
中学生年齢の12〜15歳6,500人にインターネットで聞き、6,450人から回答を得ました。
結果、年間欠席30日未満でありながら不登校傾向にある中学生は、中学生全体の10.2%にあたる推計約33万人。当時の文部科学省の不登校中学生の、およそ3倍にあたる人数でした。[2]
2018年の調査なので数字そのものは古いのですが、ここで押さえてほしいのは割合の桁です。10人に1人。 30人のクラスなら3人前後。学校に行き渋る子は例外的な存在ではなく、どのクラスにも普通にいる、という前提で考えてよいということです。
「うちの子だけがおかしいのでは」という不安が、この記事を読むきっかけだったなら、まずそこは違うとお伝えしたいです。
うちの子はどのタイプ?不登校傾向の4つのかたち
日本財団の調査では、不登校傾向を4つに分けています。この分け方が、家庭で状況を整理するのにとても使いやすいので紹介します。
- 教室外登校 校門や保健室、相談室、校長室までは行くけれど、教室には入らない
- 部分登校 基本的には教室で過ごすが、授業に参加する時間が少ない(遅刻・早退が月に5回以上など)
- 仮面登校A(授業不参加型) 教室にはいるが、みんなとは違うことをしている(月に2〜3回以上、または1週間続けて)
- 仮面登校B(授業参加型) 教室にいて、みんなと同じことをしている。でも心の中では学校に通いたくない、学校がつらいと毎日感じている
調査では、①〜③の合計が約13万人、④の仮面登校Bだけで約14万2千人と推計されています。[2]
つまり、いちばん人数が多いのは、見た目には何の問題もない④のタイプです。 遅刻もしない。保健室にも行かない。成績も普通。だから誰も気づかない。担任にも「特に気になることはありません」と言われる。それでも本人は毎日しんどい。ここが隠れ不登校のいちばん厄介なところです。
僕自身の話をさせてください。不登校になる前、朝、ランドセルを背負って玄関までは行けたのに、そこから足が動かなくなった日があります。
学校に行ったふりをして、近所の公園でブランコに乗りながら、ただ時間が過ぎるのを待っていました。家に帰れば、何事もなかったような顔をしていました。
子どもは、親に心配をかけないために平気な顔をするのがとても上手です。教室にいる時間がつらい子も、同じことをしています。
なぜ気づかれにくいのか
隠れ不登校が見過ごされるのには、はっきりした理由があります。
- 出席簿の上では問題がない 学校の側が異変を検知する主な指標は欠席日数です。遅刻・早退・保健室利用の回数は担任のメモには残っても、家庭に共有される仕組みがありません
- 本人が言葉にしない 「学校がつらい」と言えば親が悲しむ、先生に伝わる、大ごとになる。そう考えて黙る子がとても多いです。理由を自分でも説明できない子も同じくらい多い
- 親の側にも「まだ行けている」という安心がある 行けている日があるぶん、「波があるだけ」「来年クラスが変われば」と様子を見てしまう。これは親御さんが悪いのではなく、当然の判断です
サインとして出やすいのは、日曜夕方からの不調、朝の頭痛や腹痛、持ち物の忘れ物の増加、休日との落差、友だちの話が出なくなること。ただし、朝の頭痛や腹痛を「気持ちの問題」と決めつけないでください。
起立性調節障害など体の側に原因があることもあります。症状が続くときは、まず小児科で体の状態を診てもらってください。心身の状態については、学校やフリースクールではなく医療機関の判断が必要です。
前兆として現れやすいサインの全体像は、こちらの記事にまとめています。
「うちの子はこの段階だけど、どう動けばいい?」という相談も、LINEで受け付けています。
欠席が30日に届かなくても、使える支援はもうある
隠れ不登校の記事を読んでいると、原因の解説と「見守りましょう」で終わっているものが多いのですが、僕がいちばん伝えたいのはここです。支援の入口は、欠席30日で開くわけではありません。
学校の中の手段
担任とスクールカウンセラーには、欠席日数に関係なく相談できます。相談室登校・別室登校・保健室での過ごし方も、その場で決めてもらえます。保健室登校が出席としてどう扱われるかは、こちらで整理しています。
自治体の教育支援センター(適応指導教室)
多くの自治体で、不登校の子どもの学びの場として設置されています。利用要件は自治体ごとに違い、欠席日数の条件を設けているところもあれば、行き渋りの段階から相談を受けているところもあります。お住まいの市区町村の教育委員会に、「まだ休みがちな段階だが利用できるか」と電話で聞いてみてください。
出席扱いの制度
文部科学省の通知に基づき、フリースクールでの活動や自宅でのICT学習が一定の要件を満たし、校長が認めれば、在籍校の出席として扱われます。[3] この制度に「年間30日以上休んでいること」という条件はありません。要件の詳しい中身はこちらで解説しています。
>>「不登校でも出席扱いに?」文部科学省の通知で出席扱いになる3つの要件を徹底解説
僕は、フリースクールでの活動が学校の通知簿に反映されているのを見たとき、初めて自分のやっていることが「サボり」ではないと思えました。出席扱いは、欠席日数を減らすための制度というより、子どもが自分を否定しなくて済むための制度だと思っています。
フリースクール
フリースクールは、不登校と認定された子だけが通う場所ではありません。週1回から、学校を続けながら並行して通う子もいます。この使い方については、こちらの記事で詳しく書きました。
>>不登校じゃなくてもフリースクールに通える?行き渋りの段階から使うという選択
親がこの段階でできること、しないほうがいいこと
まず、しないほうがいいことから。
- 「行けてるんだから大丈夫」と言わない 本人がいちばん言ってほしくない言葉です。頑張って行っていることが、なかったことになります
- 理由を問い詰めない 自分でも説明できないことのほうが多く、聞かれるほど「言えない自分が悪い」という話になっていきます
- 他の子やきょうだいと比べない 教室にいるのにつらい子は、すでに自分で自分を比べて消耗しています
そのうえで、できることが2つあります。
ひとつは、記録をつけることです。遅刻・早退の日付、保健室に行った回数、朝に体調不良を訴えた日をカレンダーに丸を付けるだけでかまいません。
学校に相談するとき、「最近しんどそうで」と言うのと、「この3か月で遅刻が11回、保健室が7回です」と言うのとでは、学校側の受け止め方がまったく違います。隠れ不登校は出席簿に映らないぶん、家庭の記録が大きな手がかりになります。
もうひとつは、学校の外に、評価されない場所をひとつ持っておくことです。教室にいる時間がつらい子にとって、成績も出席も関係ない時間がどこかにあるかどうかで、消耗の速度が変わります。
習い事でも、地域の居場所でも、週1回のフリースクールでもかまいません。完全に行けなくなってから探すより、まだ行けているうちに見つけておくほうが、ずっと楽です。
明光フリースクールという選択肢
平日の日中に通える場所として、僕たちは明光フリースクールを運営しています。明光義塾の個別指導の考え方がベースになっていて、一人ひとりに寄り添った運営をしています。プログラミングやeスポーツの時間もあり、学校ではないけれど「通う場所」として日々を過ごせます。
隠れ不登校の段階のお子さんにとって、ここがどう役に立つかを具体的に書きます。教室にいるのがつらい子は、「学校か、家か」の二択しか持っていないことが多いです。学校はしんどい、でも休めば家で一人になる。
だから無理をしてでも行く、という循環になります。三つ目の行き先ができると、この循環が切れます。学校を続けながら週1回だけ通う子もいますし、行ける日と行けない日の波を前提に使う子もいます。
「完全に行けなくなってから」ではなく、この段階から使えるのがフリースクールです。
学校の出席扱いや自治体の補助金の対象になる実績も多数あります。新規の校舎もどんどん展開していますので、お近くの教室についてはまずはお問い合わせください。
まだ外に出るエネルギーがないお子さんには、オンラインフリースクール「クラスジャパン小中学園」があります。ネットの先生(担任)が伴走し、自宅から自分のペースで学べます。2018年の開校から、これまでに2000人以上の不登校の子どもたちをサポートしてきました。
学習面では、生徒一人ひとりにカスタマイズされた最先端のAIサポートがあります。答えをすぐ教えるのではなく、ヒントを出しながら一緒に考えるAIなので、わからない場面でつまずかずに答えまで辿り着けます。学習以外の用途には使えないフィルタリング設定付きで安心です。
今日できる一歩
今日できる一歩として、カレンダーか手帳を1冊決めて、今月の遅刻・早退・保健室に行った日に印を付けてみてください。思い出せる範囲でかまいません。数を見ると、「なんとなくしんどそう」が「月に何回」に変わります。それが、学校に相談するときの最初の材料になります。
まとめ
隠れ不登校とは、年間欠席30日という文部科学省の基準に届かないために統計に出てこない、不登校傾向の子どもたちのことです。
2018年の日本財団の調査では、中学生の10.2%、推計約33万人にのぼり、そのうち約14万2千人は、教室でみんなと同じことをしながら心の中ではつらいと感じている「仮面登校B」でした。いちばん人数が多いタイプが、いちばん気づかれにくいということです。
気づいたときにできることは、決して「見守る」だけではありません。担任とスクールカウンセラーへの相談、教育支援センター、出席扱いの制度、フリースクール。
どれも欠席30日を待たずに使えます。家庭では、理由を問い詰める代わりに記録をつけ、学校の外に評価されない場所をひとつ作っておく。
完全に行けなくなってから探すより、この段階で見つけておくほうが子どもも家庭もずっと楽です。
お子さんを責める必要も、ご自身を責める必要もありません。今日からできる小さな一歩を、一緒に探しましょう。
よくある質問
隠れ不登校は正式な言葉ですか?
正式な用語ではありません。日本財団が2018年の調査で使った「不登校傾向」という分類が、報道を通じて隠れ不登校と呼ばれるようになりました。
文部科学省の統計では、年間30日以上欠席した子どもだけが不登校として数えられるため、欠席が29日までの子はどれだけつらくても統計に出てきません。その部分を指す言葉です。
欠席日数が少なくても、フリースクールや出席扱いは使えますか?
使えます。文部科学省の通知に基づく出席扱いの制度に、「年間30日以上欠席していること」という条件はありません。フリースクールも、学校を続けながら週1回だけ通う使い方ができます。教育支援センターは自治体によって利用要件が違うので、お住まいの市区町村の教育委員会に確認してください。
子どもが「学校はつらくない」と言うのですが、隠れ不登校の可能性はありますか?
あります。調査で推計人数がいちばん多かったのは、教室でみんなと同じことをしながら心の中ではつらいと感じている「仮面登校B」でした。
親を心配させたくなくて平気な顔をする子はとても多いです。理由を問い詰めるのではなく、遅刻・早退・保健室に行った回数を記録して事実で状況を見てください。頭痛や腹痛が続くときは、まず小児科で体の状態を診てもらってください。
出典
- 文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」 PDF 本文へ戻る
- 日本財団「不登校傾向にある子どもの実態調査」(2018年12月) PDF 本文へ戻る
- 文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」 ページ 本文へ戻る
