不登校の子と平日の昼間に外出していいのか。買い物や散歩に連れ出したいけれど、「学校は?」と聞かれたらどうしよう、補導されたりしないだろうか、と足が止まっている方へ。
先に答えます。不登校の子が平日の昼間に外出しても、補導の対象にはなりません。 警察の補導の根拠になっている規則が対象として挙げているのは、飲酒、喫煙、深夜はいかいなどの行為で、「平日の昼間に学校の外にいること」は入っていません。[1]
とはいえ、「補導されない」とわかっても、外に出る足取りが軽くなるわけではありません。この記事では、ルールの整理に加えて、声をかけられたときの答え方、近所の目との付き合い方、堂々と出かけるための段取りまで書きます。
自己紹介が遅れました。小幡和輝です。約10年間の不登校を経験し、当時の僕を支えてくれた場所がフリースクールでした。いまはそれを運営する側として、本を書いたり、2000人以上の子どもたちとご家庭に関わっています。
「補導」とは何か。対象になる行為を規則で確認する
補導という言葉は日常でよく使われますが、中身は意外と知られていません。警察の少年に関する活動は、国家公安委員会が定めた少年警察活動規則にもとづいています。この規則で補導の対象になる「不良行為少年」は、次のように定義されています。[1]
『非行少年には該当しないが、飲酒、喫煙、深夜はいかいその他自己又は他人の徳性を害する行為をしている少年』
つまり補導の対象は「行為」であって、「学校に行っていないこと」ではありません。平日の昼間に本を買いに行く、公園を歩く。どれも規則が挙げる行為には当てはまりません。
「その他徳性を害する行為」という部分を心配する方もいますが、警察が想定しているのは、深夜の外出や危険な場所への出入りのような、本人が被害にあったり非行に進んだりするおそれのある行為です。日中に買い物をしている場面に、この条文が向くことはありません。
「深夜」は何時から?青少年条例で決まっている時間
補導の話とセットで知っておきたいのが、都道府県の青少年健全育成条例です。例えば東京都の条例では、深夜を午後11時から翌朝4時までと定め、保護者は正当な理由なくこの時間帯に18歳未満の子を外出させないよう努める、としています。[2]
裏を返せば、条例が制限しているのは深夜だけです。平日の午前10時に図書館にいることを制限する条文は、東京都の条例にはありません。時間帯の区切りは自治体ごとに違うので、お住まいの都道府県の条例を一度だけ確認しておくと安心です。
生活リズムが崩れて夜型になっている子の場合は、外出の時間が条例の深夜にかからないように気をつける、という一点だけ意識してください。不登校の子の昼夜逆転については、こちらの記事で整理しています。
>>不登校の子の昼夜逆転はどう戻す?生活リズムを整える現実的な5ステップ
「学校を休ませて外に出す」ことは親の責任問題になる?
補導の心配の奥には、「学校に行かせていないのに遊びに連れ出していいのか」という後ろめたさがあることが多いです。ここも法律の側から整理しておきます。
学校に通わせる義務は保護者にありますが、病気やその他やむを得ない事由で就学が難しい場合の扱いも法律に書かれており、不登校で親が罰せられた例は、僕の知る限りありません。この点はこちらの記事で条文ベースに解説しています。
>>義務教育なのに学校に行かせないのは違法?「親が罰せられる」という誤解を解く
さらに、2016年にできた教育機会確保法は、国と自治体に対して「個々の不登校児童生徒の休養の必要性を踏まえ」て支援するよう求めています。[3] 休むことは法律が認めている前提です。休んでいる子が日の光を浴びて体を動かすことは、その休養の一部だと考えてください。
>>外出のことも含めて、いまの状況を相談してみる。小幡和輝の無料LINE相談
声をかけられたときの答え方。親子で決めておく3つのこと
補導の対象ではなくても、警察官や近所の人から「学校は?」と声をかけられる可能性はゼロではありません。そのときに固まってしまわないよう、出かける前に親子で決めておくことが3つあります。
- 答える一言を決めておく 「学校は休んでいます。親も知っています」で十分です。理由を説明する義務はありません
- 保護者の連絡先を持たせる 子どもだけで出るときは、スマホか、電話番号を書いたメモを持たせます。「親に電話してもらってかまいません」と言えると、その場で話が終わります
- 服装は制服以外にする 制服だと「授業中では」と見られやすくなります。私服で出るだけで、声をかけられる場面が減ります
僕自身、不登校だったころ、平日の昼間に外を歩いていて近所の人に「学校は?」と聞かれたことがあります。夕方のチャイムが鳴ると同級生が帰ってくるので、その時間帯は外に出られませんでした。答えを決めていなかったから、聞かれるたびに固まっていたのだと、いまならわかります。
近所の目が気になるときの、行き先と時間の選び方
規則の心配が消えても、近所の目は残ります。ここは無理に克服するものではなく、行き先と時間を選んで避けてよいものです。
行き先は、平日の昼間に子どもがいても不自然でない場所を選びます。図書館、博物館や科学館、大きな公園、少し離れた駅のショッピングモールなどです。「知っている人に会わない距離」まで出ると、親子ともに肩の力が抜けます。
時間は、登校時間と下校時間を外します。午前10時から午後2時ごろは、学校のある子が外にいない時間帯で、通学路にも人がいません。最初は「この時間に1駅先の図書館へ」のように、行き先と時間をセットで決めると動きやすいです。
平日の昼間の過ごし方全体の組み立て方は、こちらの記事で解説しています。
>>不登校の子の日中の過ごし方。家にいる時間をどう組み立てるか
外出が「行き先のある外出」に変わると、日常が動き出す
買い物や散歩の外出に慣れてくると、次に欲しくなるのが「平日の昼間に、決まった行き先がある」状態です。行き先があると、外出は説明の要らないものになります。「今日はあそこに行く日」と言えるだけで、近所の目も、子ども自身の後ろめたさも軽くなります。
その行き先の候補が、平日の昼間に開いている塾や、対面のフリースクールです。学校の外に通う場所を持つことで、「学校か家か」の二択が「学校か家か、もう1つの場所か」に変わります。平日の昼間に通える塾の探し方は、こちらの記事にまとめています。
>>不登校の子が昼間に通える塾はある?平日日中に学べる場所の選び方
明光フリースクールという選択肢
平日の日中に通える場所として、僕たちは明光フリースクールを運営しています。明光義塾の個別指導の考え方がベースになっていて、一人ひとりに寄り添った運営をしています。プログラミングやeスポーツの時間もあり、「学校ではないけれど通う場所」として機能しています。
外出をためらってきたご家庭にとっての良さは、平日の昼間に「行く場所がある」状態になることです。通う日は堂々と家を出られますし、「学校は?」と聞かれても「フリースクールに通っています」で会話が終わります。通う道のりそのものが、外に慣れる練習にもなります。
学校の出席扱いや自治体の補助金の対象になる実績も多数あります。出席扱いにするかどうかは在籍校の校長先生の判断ですが、認められれば、通ったことが学校の記録にも残ります。新規の校舎もどんどん展開していますので、お近くの教室についてはまずはお問い合わせください。
まだ外に出るエネルギーがないお子さんには、オンラインフリースクール「クラスジャパン小中学園」があります。ネットの先生(担任)が伴走し、自宅から自分のペースで学べます。2018年の開校から、これまでに2000人以上の不登校の子どもたちをサポートしてきました。
学習面では、生徒一人ひとりにカスタマイズされた最先端のAIサポートがあります。答えをすぐ教えるのではなく、ヒントを出しながら一緒に考えるAIなので、わからない場面でつまずかずに答えまで辿り着けます。学習以外の用途には使えないフィルタリング設定付きで安心です。
今日できる一歩
今日できる一歩として、お子さんと一緒に「学校は?と聞かれたときの一言」を決めて、紙に書いて玄関に貼ってください。「学校は休んでいます。親も知っています」でかまいません。
外出の予定はまだ立てなくて大丈夫です。答えが決まっているだけで、次に出かけるときのハードルが1つ減ります。
まとめ
不登校の子が平日の昼間に外出しても、補導の対象にはなりません。補導の根拠になる規則が対象にしているのは飲酒、喫煙、深夜はいかいなどの行為で、青少年条例が制限しているのも深夜の時間帯だけです。休むことは教育機会確保法が前提にしており、休んでいる子が外の空気を吸うことに後ろめたさは要りません。
出かける前に、答える一言、保護者の連絡先、制服以外の服装の3つを決めておいてください。近所の目は、行き先と時間を選んで避けてかまいません。慣れてきたら、平日の昼間に決まった行き先をつくると、外出が説明の要らないものに変わります。
完璧な正解を最初から選ぶ必要はありません。迷っている段階の相談こそ歓迎です。ひとりで抱え込む前に、話してみてください。
よくある質問
不登校の子が平日の昼間に外出すると補導されますか?
補導の対象にはなりません。少年警察活動規則が補導の対象として挙げているのは、飲酒、喫煙、深夜はいかいなど本人や他人の徳性を害する行為で、平日の昼間に学校の外にいること自体は含まれていません。
警察官や近所の人に「学校は?」と聞かれたらどう答えればいいですか?
「学校は休んでいます。親も知っています」で十分です。理由を説明する義務はありません。子どもだけで出るときは、保護者の電話番号を書いたメモやスマホを持たせ、「親に電話してもらってかまいません」と言えるようにしておくと安心です。
不登校の子は何時まで外出していいですか?
都道府県の青少年健全育成条例が制限しているのは深夜の時間帯です。東京都の条例では午後11時から翌朝4時までが深夜と定められています。時間帯は自治体ごとに違うので、お住まいの都道府県の条例を確認してください。昼間の外出を制限する条文はありません。
出典
- e-Gov法令検索「少年警察活動規則(平成十四年国家公安委員会規則第二十号)」第2条 ページ 本文へ戻る
- 警視庁「東京都青少年の健全な育成に関する条例の概要」 ページ 本文へ戻る
- e-Gov法令検索「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」第13条 ページ 本文へ戻る
